中医薬膳学って?


 中医学は、中国の古代哲学からうまれた医学であり、その思想の中には自然の宇宙観が多く含まれています。

 

月と日は、毎日同じように昇って同じように沈んでいきます。

1日の昼と夜では大きな変化があり、1年の中にも自然の気候の変化もあります。

植物は、種から芽生え、新緑となり、成長し、花が咲き、実になり、枯れていくということを繰り返し循環し、動物も同じように、誕生し、成長し、成熟し、老化する、いわば生死の変化を循環しています。

自然宇宙の中に存在するものは皆つながり、互いに消長、変化し合い、その始点と終点は同じところだと認識されています。

これが生体観念と弁証論治という中医学の特徴につながります。

生体観念・・・「人と自然との統一性(天人相応)」「人体の統一性(五臓六腑)」「社会環境との統一性」

弁証論治・・・「弁証(病と症との判断)」「論治(治療原則と治療方法を判断)」

 

そして、中医薬膳学の特徴には、「中医学の理論にもとづく」「予防を中心とする」「陰陽調和のための食事」「弁証による施膳」「四気五味の効果を得る」「調理方法を重要視」があります。

 

中医学の理論にもとづく

 

中医薬膳学は、中医学の理論に従って、適した食材や生薬を用いて「飲食・養生・健康の維持・疾病の予防・病気の治療」に役立てる学問です。

医学の陰陽五行学説・蔵象学説・病因病機・四気五味・昇降浮沈・帰経などの理論が薬膳学の中に生かされています。

 

自然の中に生かされている人々は、常に夜昼の変化や気候・地理環境の変化に従って日常生活を行い、

食生活の節度と規則正しい生活習慣を守っていれば、身体と精神の健康を維持しながら長寿を全うすることができると考えられています。

また、自然界だけでなく、身体の各臓腑の生理機能は、促進し合い、病機の時にもお互いに影響し合っており、

自然界が提供してくれた食材や生薬は、脾胃の消化・吸収作用を通じて、気血に変化し、腎を養い、生命を維持する役目を果たしています。

 

この、自然界・人体・臓腑・食事が密接に結び付いているとする考え方が、中医学の生体観念です。

 

予防を中心とする

 

中医薬膳学の一番の目的は、健康と長寿です。

「道理をよくわきまえた人は、病気になってしまってから治療方法を講ずるのではなく、まだ病にならないうちに予防する」=「治未病」

この疾病の予防について「自然に順応する」「精神を保養する」「飲食を調節する」「体力を向上させる」「補腎益精をする」ことが重要になってきます。

 

陰陽調和のための食事

 

五穀は人体に栄養をつけ、五果はその補助となり、五畜の肉はそれを補益し、五菜は臓腑を充実させます。

食生活の中で、この五穀・五果・五畜・五菜の陰陽属性を知って、これらをバランス良く食すことが健康につながります。

 

陰陽学説では、自然界のすべての物事には、相互作用と対立の両面があるとされています。

昼と夜・天と地・男と女等はバランスよく存在しており、すべての物事は陰陽の対立する両面をもちながら統一され、常に動きながらバランスを保っています。このようなバランスのとれた状態を「陰平陽秘」といいます。

この「陰平陽秘」のバランス状態が崩れてしまうと「陰陽失調」の状態になり、疾病へとつながっていきます。

 

「陰陽失調」の状態には、「陰陽偏盛」、「陰陽偏衰」、「陰陽互損」があります。

 

弁証による施膳

 

薬膳は普通の食事ではなく、何らかの目的を持ってする食生活です。

遺伝・環境・生活習慣・職業・体質などは人によって違い、四気陰陽の変化・加齢による身体の生理機能の変化もあるので、それぞれの特徴に合わせ食生活を調整することにより、陰陽のバランスを保つのが薬膳学の本質です。

 

献立を立てるときには、これらを考慮しながら食材や調理方法を考えていきます。=弁証施膳

 

四気五味の効果を得る

 

伝統的に四気五味というが、実際には五気六味です。

五気とは、食材や生薬が持っている「寒・涼・平・温・熱」の性質を指し、六味とは、食材や生薬が持っている「辛・甘・酸・苦・鹹・淡」の味を指しています。

季節による身体の不調・五臓の病気は、五気六味をそれぞれの働きに合わせて使用すると適切な効果が得られます。

 

このような、古代から現在までの貴重な経験値が、中医薬膳の「医食同源」「食薬同源」の背景となっています。

 

調理方法を重要視

 

薬膳学は、養生・疾病予防・病気の軽減などを目指す学問でありますが、

治療のために中薬を飲むのとは違い、見た目の楽しさや食べるときのおいしさがないと食事とはいえません。

薬膳を作るときには、目的に合わせて食材や生薬を選びながらも、料理の色・香り・おいしさ・形などを考慮し、かつ、適切な調理方法を取入れることが重要視されます。

陰虚であれば、油で揚げる・焼くくといった調理方法やカレーのような辛い物は避け、陽虚であれば、生野菜・冷たいデザート・刺身のようなものは禁物です。